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“ 石投げ計画 ”
※この「石投げ計画」は創作活動をはじめるきっかけとなった出来事のひとつである。画像に使用している地図はこの話を思い出して書き出した当時みつけた身近な地図。
1998
オーストラリア
記録なし
私が生まれて初めて本州という陸を離れて海外に行った。中学三年生の修学旅行がオーストラリアだったからだ。めったにないこの機会になにかしなくては、という衝動からとりあえず 庭の石を持っていくことにした。石には「1」と油性マッジックで書いた。自分がオーストラリアに来た証として石を残そうと考えたのだ。いつどこで石を残すかは特に決めていなかった。 修学旅行5日目の12月11日。オーストラリアヴィクトリア州でのファームステイ中。ホストマザーのスージーが野生のカンガルーを見に行こうといった。夜11時過ぎ、ジープに乗ってカンガルーを探しに行く。草原を照らすヘッドライトの先には何も見えない。探し出してしばらくし車が右折した瞬間、ヘッドライトの先に何十頭もの野生のカンガルーが現れた。この瞬間、私は窓から「1」を投げた。衝撃を感じた自分が投げるという行為を行ったように思う。 私がこの世に生まれ、カンガルーに感動した。だから「1」の石は、私の家の庭からオーストラリアの草原へと投げられたんだ。そう考えると変な気がした。 真っ暗闇に浮かんだ未知な存在。一体何頭いたのか。その存在に対する思いが、投げるという行為と「1」によって私の中に残った。日本に帰ってからも「1」の存在が気になった。今頃、カンガルーの群れに踏まれているのではないか。少し転がったりして、移動したかもしれないと思ったりする。